みなさん食品ロスをご存知でしょうか。
今や、世界中で問題視されるなか、日本でも大きな問題になっています。
そんな食品ロスについて、世界や日本の取り組みについてご紹介していきます。
食品ロスとは
食品ロスとは、本来食べられるのに捨てられてしまう食品のことをいいます。
日本の食品廃棄は年間で2510万トン、そのうち食品ロスは570万トンになります。
この570万トンは国連世界食糧計画(WFP)による食糧援助量(420万トン)の約1.4倍にもなります。
食品ロスの内訳は、事業系食品ロスが309万トン(54%)、家庭系食品ロスが261万トン(46%)です。つまり、食品ロスのうち約半分は、家庭から生じています。
企業だけが食品ロスへの対策をするだけではなく、国民全員で対策しなければなかなか減りません。
そこで、2022年5月時点での日本の食品ロスへの取り組みについて調査しました。
近年、ニュースでも取り上げられることの多い食品ロス(フードロス)問題。 実は30年前からメディアで問題提起されています。 一体なにが問題となっているのでしょうか。 日本の食品ロス状況、対策などを詳しく解説していきます。 […]
日本での食品ロスへの取り組み
日本政府は、2030年までに2000年時の食品ロス量の半分まで減少させる目標を掲げました。
それに伴い、国や地方公共団体、事業者、消費者が連携して食品ロス削減に取り組むため、2019年に食品ロス削減推進法が施行されました。
法律が施行されてからの企業や家庭での取り組みを「事業系食品ロス」、「家庭系食品ロス」に分けて、紹介していきます。
事業系食品ロスへの取り組み
2000年時点の事業系食品ロスは547万トンが発生していました。これを。2030年には半減させる目標が設定されています。
そのため、企業への食品ロスに対してのルールも厳しくなっており、事業系食品ロスへの様々な取り組みが実施されています。
- 納品期限の緩和などフードチェーン全体での商習慣の見直し
- 賞味期限の延長と年月表示化
- 食品廃棄物等の継続的な計量
- 賞味期限・消費期限等の食品表示に関する正しい理解の促進
- 食べ切り運動の実施
- 食中毒の食品事故が発生するリスク等の関する合意を前提とした食べ残した料理の持ち帰り容器の活用
- フードバンク活動の積極的な活用
- 食品ロスの削減に関する積極的な普及啓発及び食育の推進
家庭系食品ロスへの取り組み
食品ロスの約半分を占める家庭系食品ロスを減らすためには、私たち一人一人の意識を変える必要があります。
以下のように、様々な家庭系食品ロスへの取り組みがあるので、確認しましょう。
- 消費者への啓発
- 買物前の食材確認、適量の購入
- 保存の工夫や使いきり
- 調理の工夫
- 体調や状況に応じた適量の食事の準備
- 期限表示の理解
次に、事業系食品ロスの各企業での取り組みや家庭で取り組むべきことを詳しく説明していきます。
コンビニ
コンビニ業界での食品ロスの取り組みについてご紹介していきます。
大手コンビニ4社が共通して行なっている取り組みは、「てまえどり」です。
商品を陳列する際に賞味期限が近い物を手前に置き、消費者に手前から取ってもらうためのシステムです。
賞味期限の近い物から売ることができるため、賞味期限切れによる食品廃棄が少なくなり、、食品ロスを削減することができます。
さて、ここからは大手4社のそれぞれの食品ロスへの取り組みについて紹介していきます。
セブンイレブン
セブンイレブンでは、素材・製造工程・温度管理の見直しを行い、味やクオリティーを維持しながら、賞味期限を長くさせるチルド食品を開発・製造しています。
また、ポイント付与による食品ロスへの取り組みも行なっています。
販売期限が近づいた商品を購入するとnanacoポイントが付与されるため、消費者はポイントが付与されるだけでなく、自然と食品ロス削減に貢献でき一石二鳥です。
ファミリーマート
ファミリーマートでは、店舗から出る廃棄物を、廃棄物処理委託業者と取引することにより、飼料や肥料にリサイクルしています。
リサイクル飼料を与えて育った豚を食材にした弁当や惣菜パンなどを製造し販売しています。
ローソン
ローソンでは、店舗でお弁当やパンを発注するときに「セミオート発注システム」という半自動の発注システムを導入しています。
また、2019年8月から店舗への納品期限が切れてしまった加工食品やお菓子などを定期的に寄贈する取り組みを行っています。
ミニストップ
ミニストップでは、ファーストフードを製造する際に出る使用済みの油を委託業者を通じてほぼ100%リサイクルしています。
また、弁当などを飼料化、堆肥化、バイオガス化を積極的に行うことで、食品の廃棄を減らす取り組みをしています。
スーパー
大手スーパーの取り組みについて紹介していきます。
調べたところ、ほとんどのスーパーで行われていた食品ロスへの取り組みは見切り商品の値引きでした。
見切り商品とは賞味期限、消費期限が迫っている商品のことを言います。
その商品を値引きすることで、消費者に購入を促し、食品ロスの低減を行っています。
その他にも、各スーパーで取り組みを行っているので紹介していきます。
ハローズ
ハローズはフードバンクを介さずに、支援団体に直接渡すことで、比較的早めに傷んでしまうような商品でも提供が可能になりました。
成城石井
製造過程で基準を満たさない商品の割安販売を行っています。
基準を満たないと言っても、形や色に少しムラがある程度で食べれないほどのものでは、ありません。
その他には余った食パンの耳などをラスクにし、販売するなど食材が余らないような工夫をしています。
ヤオコー
ヤオコーが自社センターで製造したドライパンはカットフルーツなどの切れ端を使った商品。
これまでは、廃棄するしかなかった物をアレンジし、商品化して食品ロスへの取り組みを行っている。
学校
今では学校でも給食の食品ロスの取り組みを行っています。
取り組みは学校によって様々な取り組みをしているが、ここでは主に取り組んでいる内容を紹介していきます。
【食べ残しの削減(リデュース)】
- 給食支援員による残食量調査
- 残食を減らすことの呼びかけ
【食品残渣の有効活用(リサイクル)】
- 登録再生利用事業者への持ち込みによる堆肥化
- しんぶんコンポストキットを使った堆肥化体験
- 学校敷地内に設置した生ゴミ処理機による液肥化
【啓発活動(食品ロスを学ぶ)】
- イベントの開催
- 食品ロス問題啓発教材の作成・配布
その他にも野菜の切り方を変更し、廃棄量を減らしたり、廃棄していた野菜の皮を再利用したりなどの取り組みも行っています。
家庭
家庭での取り組みは個人の意識や工夫がないと減りません。
食品ロスを削減するために家庭でできる取り組みを紹介していきます。
必要な量だけの料理を作る
必要な分だけの料理を作らないと「食べ残し」が発生します。
適切な量の料理を作ることはできません。
残ってしまったときに、廃棄するのではなく、保存するのがベストです。
料理をする際には食べれるところは捨てない
野菜の皮や茎など使える所を捨ててしまうことを「過剰除去」といいますが、そこを使うことで食品ロスの低減になります。
また、野菜の皮や茎は栄養素がたくさん含まれているので、使用することで食品ロスにも栄養にもなり、一石二鳥です。
食材を購入するときは必要な分だけ買う
冷蔵庫の中身を確認し、必要な分だけ購入することが大事です。
また冷蔵庫の中身を確認するときは、賞味期限などを確認し、献立の予定をできるだけ立てると無駄な食材を買わなくてもよくなります。
こうすることで、購入しすぎによる「直接廃棄」を防ぐことができます。
日本で食品ロスへ取り組む企業
食品を扱う企業では、どの企業も大なり小なりに食品ロスへの取り組みを行っています。
その中でも代表的な企業を5つ紹介をしていきます。
生活協同組合コープこうべ・神戸市
生活協同組合コープこうべでは、販売期限切れが近い商品に値引きシールを作成・貼付しています。
買物かごにも「手前から取ってね」とステッカーを貼付し、店頭では賞味期限が5日後の豆腐と1日後の豆腐の味比べも実施しています。
イオン株式会社
イオン株式会社では、プライベートブランド商品の賞味期限の年月表示や、保存容器による食品ロスを出さないライフスタイルの提案をしています。
また、食品リサイクルグループを構築し、製造過程の廃棄物発生量を「見える化」し削減と従業員の意識向上に努めています。
消費者にも食品ロス削減のアイデアを募集し、食品ロス削減の啓もう活動も行っています。
フードドライブの実施もしています。
森永乳業株式会社
森永乳業株式会社では、ロングライフ製法の商品の開発、常温の長期保存が可能な
製造方法の見直し・改善を行っています。
また、中身だけではなく、容器の紙パックの製造方法の見直し・改善
一般財団法人日本気象協会
日本気象協会では、商品需要予測事業を開始し、小売業者向けに商品需要予測サービス「売りドキ!予報」の展開を行っています。
また、気象データを活用してサプライチェーンの食品ロス削減の強化
キューピー株式会社
キユーピー株式会社では、酸素をできるだけ取り除く「ロングラン製法」で賞味期限の延長
酸素が中に入らないように容器の製造を見直しています。
また商品に賞味期限の年月表示をしています。
こうしてみると日本でも様々な企業が食品ロスへの取り組みを行っているのがわかります。
なかでも、食品を取り扱う企業だけではなく、日本気象協会などの違う分野の企業でも取り組まれている所から、日本の食品ロスの問題の大きさがわかりますね。
世界での食品ロスへの取り組み
それでは、世界ではどのような取り組みを行っているのでしょうか。
アメリカ・中国・フランス・イタリアの4カ国の取り組みを紹介していきます。
アメリカ
アメリカでは、小学校から高校で実施する「Food Waste Warriors」というプログラムを実施しています。
これは、問題の大小に問わず対処するために、意識を高め、個人が行動を起こす力を与えるための教育です。
学生の頃から、食品廃棄物への意識作りをし長期的な習慣の基板を作っていこうとするものです。
また、カリフォルニア州では、2022年に生ゴミの堆肥化が義務付けられました。
これは企業だけではなく、一般家庭でも当てはまり、コンポストにいれ生ゴミを堆肥化しなければなりません。
中国
中国では、2021年に食べ残しを禁止する法律「反食品浪費法」が可決されました。
これは過剰な量の食べ残しをしたお客さんに対して、飲食店側は食べ残した分の処分費用を請求できるといったものです。
また動画共有サイトで「大食い映像」の配信を禁止し、大食い番組に関わったテレビ局や動画配信業者に対しても罰金を科すようにしました。
フランス
フランスでは、2016年に食品廃棄禁止法が施行されました。
400平方メートル以上の店舗面積を持った大型スーパーマーケットは、賞味期限切れなどの理由による食品廃棄はできないというものです。
肥料や飼料としての再利用や寄付を義務化し、違反者には罰則が科せられます。
積極的に国が取り組んでいるので、国民も意識が変わり、「売れ残り」を再利用する働きが広がっています。
イタリア
イタリアでは、フランスと同様に2016年に食品廃棄規制法が施行されています。
寄付の手続きを簡素化することで、廃棄量を削減しています。
税制上の優遇措置が取られるため、罰則等はありません。
世界で食品ロスへ取り組む企業
各国で食品ロスに取り組む企業の紹介をしていきます。
ケロッグ(アメリカ)
ケロッグは日本ではシリアルで有名な会社ですが、アメリカでは様々な種類のお菓子を販売しています。
食品ロスへの取り組みとしては、原料に使う果物は多少形が悪くても使用し、見た目では分からないような加工をしています。
スーパーマーケットなどには置けなくても加工し、違う物として販売することで、栄養価や味は変わらず、廃棄することがなくなったそうです。
ウォルマート(アメリカ)
ウォルマートでは、売れ残りによる食品ロスを防ぐために仕入れた商品は売り切ることに力を入れています。
不良在庫をつくらないために商品の販売予測や売り方の研究をしています。
それでも売れ残ってしまった場合は、フードバンクや寄付などし、飼料・肥料・バイオマス発電の燃料にしています。
現在、世界の食料生産の3分の1は捨てられており、年間9億3100万トンものまだ食べられる食料が廃棄されています。一方で、11人に1人が飢えに苦しみ、食の不均衡が深刻化しています。日本も食品ロス大国の一つです。国連WFPが援助している食料の[…]