ゴミに新たな価値を吹き込む魔術師。
食品ロスによる環境影響の大きさは各国で問題視されています。
2015年9月の国連サミットでは「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料廃棄の半減」を目標として掲げられるなど、食品ロスを含む食品廃棄物の削減は国際的に重要な問題です。
特に日本では、食品廃棄物の約40%が焼却され埋め立てられていると環境省や農林水産省は推計しています。
このような現状のなか、暮らしに役立つ新素材へ食品廃棄物を生まれ変わらせる魔術師こそ、fabula代表取締役の町⽥ 紘太。
町田氏は環境先進国であるオランダで幼少期を過ごし、地球温暖化などの社会課題に関するプレゼンテーションをする機会が多かったという。
幼少期からの経験のもと、食品ロスや野菜の芯や皮など食べられない部分を有効活用しようと、コンクリートがれきと廃木材による新素材の開発を行っている酒井雄也研究室で、食品廃棄物から建材へ加工する実験に取り組み始めました。
想像以上の結果が出たことで、食品廃棄物から高付加価値な素材ができると、町田氏と酒井准教授は確信し、現在も研究に取り組んでいます。
成形方法はシンプル。食品廃棄物をフリーズドライさせ、粉砕してから加熱プレスすることで平板やお皿へ成形します。
原料はフリーズドライされるため、食品としての保存期間も伸びるようです。
そのため、使い終わったあとは熱処理などして食べることも視野に入れているという。
今では、原料は規格外の白菜やみかんの皮をはじめ、抽出後のお茶の葉やコンビニ弁当まで多岐にわたります。
日本の食品ロスの半分は家庭由来です。コンビニ弁当などを建材として利用することは、日本の食品ロス削減へのインパクトは大きいでしょう。
また、原料となる食品廃棄物によって、様々な色や香りを楽しむことができることもこの新素材の特徴。家に飾ってたまに香りを嗅ぐといったリラックス効果を得る使い方もおすすめです。
筆者が手に取った緑茶由来のお皿は、陶器のような質感と重量で、香りを楽しむことができる今までにないお皿でした。
形状は、平皿のほかに平板が可能であり、今後コップのようなふちの深いものにチャレンジしていくようです。
ゆくゆくは、書斎はリラックス効果のあるお茶や柑橘系原料を用い、耐久性が求められる椅子や机などは白菜由来。コンビニ弁当由来のものは、タイルやレンガへ生まれ変わる日も来るのではないでしょうか。
現在、世界の食料生産の3分の1は捨てられており、年間9億3100万トンものまだ食べられる食料が廃棄されています。一方で、11人に1人が飢えに苦しみ、食の不均衡が深刻化しています。日本も食品ロス大国の一つです。国連WFPが援助している食料の[…]