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植物工場とは?

近年、異常気象の影響で農作物の値上がりが続いています。

自然の力を借りて行う農業は、どうしても天候などの環境要因で生産量が左右されてしまいます。

しかし、植物工場では環境を完全に制御された、まるで工場のような閉鎖的な空間で、農作物を育て販売しています。

今回は植物工場の種類や仕組み、メリット・デメリットを紹介します。

植物工場とは

植物工場のイメージ画像

植物工場は、室内で人工的に野菜を生産する施設のことです。

テクノロジーの力で光・温湿度・培養液・CO2などを人為的にコントロールし、野菜を大量生産することができます。

管理が行いやすいためほとんどの植物工場が水耕栽培を行っています。

植物工場には光の取り入れ方によって「完全人工光型」と「太陽光利用型」の2種類

あります。

「完全人工光型」と「太陽光利用型」の仕組みについてそれぞれみていきましょう。

完全人工型(閉鎖系)の仕組み

完全人工型の植物工場は、温度・二酸化炭素・培養液環境などの環境条件を完全にコントロールし、かつ太陽光を一切利用せず、蛍光灯やLEDなどの人工光だけで栽培しています。

太陽光併用(利用)型の仕組み

太陽光利用型の植物工場は、ガラス室や温室などの半閉鎖環境で太陽光を光源として利用しながら、室内の環境をコントロールし作物を栽培する施設です。

日照不足のときは人工光で補助できる、人工光併用型やハイブリッド型などもあります。

植物工場メリット

「完全人工光型」と「太陽光利用型」の2種類ある植物工場にはそれぞれに異なるメリットがあります。

順番に説明していきます。

完全人工型のメリット

安定供給

完全人工型の植物工場は、完全に制御された室内にて栽培が行われるため天候に左右されることがありません。

そのため一年を通して安定した生産ができます。

完全無農薬で安心安全

クリーンルームで栽培を行うと、病原菌も寄り付かないため農薬を使用する必要はありません。

そのため、完全無農薬や使用するにも最小限に抑えることができ、安心安全な農作物を生産できます。

場所を問わず栽培可能

完全人工光型は栽培棚を積み上げて設置できるので省スペースで栽培可能です。

廃校になった校舎や倉庫・遊休施設などの再利用ができたり、飲食店内で栽培ができたりと場所を問わず生産できます。

都市部での生産も可能なので輸送コストが減少しますし、店舗併設型だとその店で使用する分だけ自社で生産することもできます。

太陽光併用のメリット

コストが安い

太陽光併用型は光源に太陽光を利用するので、その分電気代が安くなりコストダウンできます。

完全人工型では大規模な施設を導入する必要がありますが、太陽光併用型は太陽光を利用できるので大規模な工場施設を作る必要はありません。

そのため、初期投資・ランニングコストともに抑えることができます。

栽培できる作物が多い

完全人工型は現状、葉菜類しか栽培できないことに対し、太陽光併用型では果菜類の栽培や、採算が採れれば穀物の栽培も可能です。。

植物工場デメリット

2種類の植物工場についてのメリットをみていきましたが、それぞれにデメリットもあります。

以下でそれぞれ述べていきます。

完全人工型のデメリット

生産コストが高い

完全人工光型は、初期費用として建物・設備費が、ランニングコストとして光熱費(おもに人工光の電気代)・減価償却費がかかります。

両方ともに莫大な資金が必要なので、参入するには一定の資本力のある大企業に限られるうえに、利益を上げ続けるためには工夫して事業化していく必要があります。

例として、栽培面積4000㎡の植物工場を建物から新築する場合、初期投資額は約3億円にも上ります。

植物工場の収支グラフ
出典:日本施設園芸協会の調査

日本施設園芸協会の調査によると、植物工場の収支は上記の表のようになっており黒字経営は全体で30%と少なく、コストの高さがネックとなり利益が出にくいことがわかります。

生産できる農作物が少ない

現在、植物工場で事業として栽培できる農作物としては、ハーブやレタスなどの葉菜類のみです。

果物類は作物の背が高く葉が重なりあっているため、全体にまんべんなく人工光を当てるには特殊な光源が複数必要となります。

そのような設備を用意するには設備費用もランニングコストも高くなるので、採算が採れなくなり利益がでません。

また、植物工場は水耕栽培がメインなので、浸透圧の問題から根菜類は技術的に難しいといわれています。

太陽光併用のデメリット

天候により供給が左右される

太陽光併用型は人工光源のかわりに太陽光を利用しています。

そのため、従来の農業生産とかわらず天候次第では作物が実らず、工業生産のような安定供給はできません。

また完全人工光型と違い環境制御も困難なため、経験に左右される面もあり異業種が参入するにはハードルが高くなっています。

広大な土地が必要

太陽光利用型は作物にまんべんなく太陽光を当てる必要があるため、平面な場所での栽培となります。

そのため単位面積あたりの収穫量は完全人工光型よりも小さくなり、収穫量を確保するためには広大な土地が必要です。

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植物工場の将来的な課題

レタス以外の野菜も作れるように

人工光型の植物工場でレタスの栽培が多い理由は、採算性が採りやすいからです。

植物工場では光源確保と温度を保つための消費電力の生産コストが高く、採算性を考えたときに、光量があまり必要とならず、短期間で栽培でき、かつ可食部の多い作物が最も適しています。

以上のような理由からリーフレタスの栽培が植物工場では中心となっています。

単価の高い果物などを大量生産できれば採算も採れますが、まだ技術的に未確立なため果実類の植物工場は存在しません。

現在は、レタスなどの葉物類以外での大量生産を目指して研究がすすめられています。

植物工場の市場規模は拡大傾向

矢野経済研究所によると、2019年度の完全人工光型植物工場の市場規模は84億9000万円でした。

2020年度には129億円、2024年度には360億円に到達すると予測。年々、増加傾向となっています。

特に、業務用需要の割合が伸びてきており、生産量を安定して確保できる点が評価された結果です。。

大手コンビニでは、衛生管理がしっかりとされた植物工場産のレタスを使用することで、サンドイッチの賞味期限を延ばす取り組みが行われています。

また、サラダや料理の付け合わせとして外食チェーンで使用されていたりと、業務用としての需要は拡大しています。

今後、気候変動による露地野菜の安定供給が難しくなることより、植物工場の市場規模はさらに拡大するでしょう。

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植物工場に関する補助金は多い

植物工場は設備を整えるための費用も莫大です。

そのため国からの補助金制度もあり、それを利用してこの業界に参入する企業もあります。

農林水産省ではいくつかの要件を満たすことで事業費の1/2以内を補助する「強い農業づくり交付金」という補助金制度があります。

また、福井県では建設費用や電気料金を補助する独自の制度を作り、企業を誘致して県内に植物工場を作る支援を行っています。

植物工場業界への参入企業例

設備投資にたくさんの費用が必要な植物工場ですが、国の補助金を利用して参入している企業は増えてきています。

今回はその中でも大量生産に成功し、さまざまな種類の食物の研究開発も行っている1社を紹介します。

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植物工場企業 成功事例 上場企業のアイキャッチ画像

SPREAD(京都府) 株式会社スプレッド【SPREAD】

植物工場参入企業(株式会社スプレッド)ホームページ

植物工場事業を通じて、農業の技術革新とサプライチェーンの効率化で世界の食料安全保障に貢献することを目指し2006年に設立された企業です。

亀岡プラント・テクノファームけいはんなの2箇所の植物工場でレタスの大規模生産を行っていて、2030年までに100トン/日の供給を計画しています。

さらに、レタス以外の食物の栽培技術開発も積極的におこなっていて、2021年にはいちごの量産化技術を確率したと発表しており注目を集めている企業の一つです。

ちなみに植物工場は英語で何というでしょう

植物工場を直訳すると「Plant factory」です。

しかし、「plant」も「factory」も工場という意味があり混乱するかもしれません。

「plant」には「植物」という意味がもともとあり、そこから「生み出すもの、作り出すもの」へと発展して「工場」も意味するようになりました。

ネイティブの間では「factory」は製造など何かの物体を作る場所に使われ、「plant」は電力などのエネルギーを生産する場所にも使われるといった違いがあります。

工場の規模で使い分けられているわけではないので、植物工場は「plant factory」と英語で訳して問題ないでしょう。

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