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培養肉とは?-フードテックが変える食肉の未来

培養肉とは、動物から採取した細胞を人工培養により増やし、組織形成することにより作られる新しい食肉だ。

昨今、牛や鶏などの細胞を培養して作られる研究室生まれの肉が食卓を囲む日は近づきつつある。

ここでは、培養肉についてや注目される背景、培養肉の課題などについて紹介していこう。

また、培養肉のような動物性タンパク質を使用しないで作られている肉のことを代替肉と呼ぶ。

代替肉の種類などについてはこちらの記事で解説しているので、ぜひ参考にしてみてほしい。

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培養肉とは

培養肉(クリーンミート)とは

培養肉は、動物から細胞を採取し栄養を与えることで動物体外で培養させ、食べれる程度の大きさまで筋肉組織を成長させたものである。

よって、この筋肉組織は普段私たちが食べている肉の主成分の肉組織とはなんら変わらない。

もしかすると、多くの人が「培養」という言葉自体に嫌悪感を抱くことも多いかもしれない。

しかし、培養とは単に細胞を育てることであり、私たちも日常的に活用している。

一度切り取った豆苗やネギの根を水に浸すことで育て、再び食べたことがある方も多いだろう。

培養肉においてもこれと似たようなイメージであると思って欲しい。

肉の場合では、細胞が育つための栄養素を均一に供給できる環境を整えることが植物とは異なり難しい。

このように、培養肉とは、動物をと殺しないことから「クリーンミート」と呼ばれています。

最近では、培養する製造方法を正しく伝えるため、「Cell-cultured meat(細胞培養肉)」という呼び方が主流となりつつある。

培養肉が注目される背景

人口増加による食糧不足

爆発的な人口増加によるタンパク質不足の懸念により、培養肉が注目されている。

人口増加により私たちの当たり前の食肉文化が危ぶまれてきているのだ。

2019年の国連の報告によると、世界の人口は2030年までに86億人、2050年に97人、2100年には109億人に達すると予測されている。

また、農林水産省は特に低所得国および中所得国のGDPは著しく増加するとしており、低所得国では2010年比の7.7倍、中所得国では4.1倍に増加することが推定されている。

これらの国が経済発展にともない肉を積極的に食べるようになることで食肉消費量が爆発的に増加しタンパク質が不足することが見込まれている。、

また、食肉の生産者自体が年々減少傾向にあることも問題としてあげられる。

しかし、これらの食肉の爆発的な需要を満たすためには家畜の成長を考慮するとそれなりの時間が必要である。

培養肉であれば従来の畜産よりも早い生産スピードで食肉を提供することが可能である。

イスラエルのFuture Meat Technologies社 は、一日で5000個のハンバーガーに相当する500kgの培養肉を生産することができる。

これは、従来の畜産の生産スピードの約20倍である。

よって、培養肉の生産スピードの高さは今後懸念されている食料不足、タンパク質不足を解決できるのではと期待されている。

肉の生産過程における環境問題

普段、私たちが口にしている食肉は生産時に大量の温室効果ガスが排出されており、気候変動の原因の一つとなっている。

単に、残さず食べればよいという状況では無くなってきているのだ。

国連食料農業機関(FAO)によると、世界全体の畜産から発生する温室効果ガスは、人為起源の温室効果ガス排出量の14.5%を占めている。

その内、げっぷによるメタン排出が主である。

その他、家畜の糞尿から発生するメタンや亜酸化窒素の排出、堆肥製造や輸送などによるCO2の排出があげられる。

培養肉生産では、生体の家畜をほとんど使用しないため、家畜由来の温室効果ガスの排出がなくなる。

また、培養肉生産工場が分散して家庭に供給できるようになれば、輸送によるCO2排出を低減できる可能性がある。

オックスフォード大学のJohn Lynchらは培養肉が温室効果ガスの面で本当に優位であるか疑問視している。

培養肉生産時には、培養過程における温度維持にエネルギー多くのエネルギーを必要とし、エネルギー構成が火力発電に依存している場合、大量のCO2 を放出する可能性がある。

また、メタンと比較してCO2は温室効果は低いが、大気中に数千年間も滞留するため、培養肉製造過程で排出したCO2は長期的により大きな温室効果を持つ可能性があることが指摘されている。

よって、いまだ培養肉の環境問題への貢献度の大きさは明らかとなっていないが、大きなポテンシャルを秘めていることは明らかである。

倫理面-家畜をなくせる

現在の畜産において、家畜に過酷な環境を強いることにより深刻な苦痛を与えている場合がある。

肉牛の調教のための鼻環の装着や人間・牛の怪我予防のための除角する際に苦痛が生じている。

2014年の畜産技術協会によるアンケートでは、除角を行っている酪農家のうち79.4%は麻酔を行っていない。

また、霜降り肉を形成させるため、運動制限やビタミンのコントロールなど肥育方法が問題視されている。

アニマルライツに見識のある岡田千尋によると、鶏の品種改良により成長速度が加速されたことにより、自重を支えきれなくなることで歩行困難に陥る個体が存在することを指摘している。

人間と動物の間に苦痛を感じる能力に違いがないにも関わらず、家畜にのみこのような取り扱いをすることは倫理面で不当であるとみなされる。

培養肉では、家畜個体そのものを直接食べる必要がないため、生産効率のための品種改良や過密飼育が不要である。

羽生雄毅によると、脂肪細胞の培養の仕方で霜降りといった肉の味を左右するスジやサシを制御し様々な味を作ることができる。

従って、培養肉による食肉生産を代替することで、過酷な環境を強いられている家畜をなくすことができる。

培養肉のデメリット

コストが高い

培養肉の普及にはコスト低下が必須である。

2013年にGoogle共同創業者であるSergey Brinの支援により生まれた世界初の培養肉の値段は200gあたり2800万円であった。

培養肉の誕生から培養肉の値段は低下傾向にある。

2017年にアメリカのMemphis Meatは200 gあたり13万円、2018年にはイスラエルのAleph Farmsがステーキ一切れあたり5600円までコストを低下することに成功している。

将来的に1 kgあたり200円を目指す企業もあり、従来の畜産から得られる肉より安くなる可能性がある。

大量生産への課題

将来の食肉需要を満たすためにも培養肉の大量生産は必要不可欠である。

従来のペトリ皿を用いた二次元培養では、培養可能な細胞数が限られており大量生産が非常に難しい。

そこで考えられているのが三次元培養である。

二次元から三次元になることで、培養可能な体積が増えるためより大量生産が可能となる。

しかし、三次元培養にはいくつかのハードルが存在する。

培養細胞が凝集してしまうことや、バイオリアクター内の環境が不均一となり十分な栄養が細胞にいきわたらず死滅してしまうことがあげられる。

これらの課題を解決するため、米国にてスタートアップ、大企業、非営利団体が集まって設立したCultivated Meat Molding Consortiumが設立されている。

今後も食品に関わる企業と培養技術を保有するスタートアップとが連携し、培養技術のスケールアップが期待されている。

商業化への課題

消費者の心理的問題も培養肉が普及する上で課題となる。

「培養」という単語を聞いて嫌悪感を持つ人は少なくないだろう。

Wilksらは2017年に培養肉の消費意欲に関するアンケートを行った。アンケート参加者の65%が「食べてみたい」と回答し、そのうつ33%が「日常的に食べたい」と回答した。

また、48%が「大豆ミートよりも食べたい」、32%が「従来肉の代替として食べたい」という意欲を示した。

しかし、2015年のHocquetteらによるアンケートでは、培養肉を食べたいと回答した参加者は5%~11%にとどまっている。

これらのアンケートの結果より、従来肉の代替として培養肉を選ぶ消費者の割合は比較的少数であるが、培養肉を食べてみたいとおもう消費者は多いことがわかる。

今後の消費意欲に向けて、培養肉に対する知識や慣れ親しみやすさを高める必要がある。

培養肉の作り方

初めに牛の幹細胞を採取してきてほしい。

幹細胞には分化能と自己複製能の二つ能力を持ちます。

全ての細胞を作り出す能力と自らと同じ能力をもつ細胞に分裂することができる能力だ。

つまり、幹細胞はどんな細胞でも作れるため、筋肉や内臓器官までなんでも形成させることが可能である。

初めに、採取した幹細胞から取り出した筋肉さの細胞を必要な栄養素が入った培養液に浸す。

すると、1個の細胞から1兆個もの細胞を作り出すことが可能だ。

これらを集めゲル状のリングの上に置くと、筋肉組織へと袖立てることができる。

育てた筋肉組織をかき集めることで挽き肉のような塊が完成する。

培養液の作り方

培養液はドラックストアやアマゾンで買えるもので簡単に作ることができる。

日本経済新聞「あなたもできるかも 培養肉の作り方」より編集部で作成

培養肉のベンチャー/スタートアップ

現在、ぞくぞくと培養肉業界に取り組む企業が増えているのだ。

家畜培養肉に取り組むスタートアップ企業は、モサミート、メンフィスミーツ(Memphis Meats)、Meatable、スーパーミート(Supermeat)

培養肉の海外企業

モサミート

モサミートは、2013年に世界で初めて牛の培養肉ハンバーガーを発表したことから、培養肉のパイオニア的存在だ。

オランダ人研究者のマーク・ポスト博士は13年、米グーグルの共同創業者セルゲイ・ブリン氏から資金支援を受けた研究で、世界初の培養肉バーガーを開発した。この取り組みから、培養肉の実用化をめざすオランダのモサ・ミート(MosaMeat)が誕生した。

メンフィスミーツ(Memphis Meats)

サンフランシスコに拠点を置くメンフィス・ミーツは自己増殖する細胞から肉を作っている。

2016年に製品第一弾の合成ミートボールを発表し、2017年に世界初の培養鶏肉とカモ肉を披露した。

メンフィス・ミーツは市販の肉と競合できるよう、培養肉のコスト削減をめざしている。

培養肉の当初の生産コストは1ポンドあたり1万8000ドルだったが、18年1月には2400ドルまで下げた。現行の食肉生産で使われている土地と水のそれぞれ1%で培養肉を生産できるとしている。18年3月には、この「クリーン」鶏肉とカモ肉を21年に店頭販売する方針を発表した。

メンフィス・ミーツは18年、米ドレイパー・フィッシャー・ジャーベットソン(DFJ)が主導し、ビル・ゲイツ氏やリチャード・ブランソン氏らも参加したシリーズAの資金調達ラウンドで1700万ドルを調達した。さらに、18年初めには米タイソン・ニュー・ベンチャーズから出資を受けた。金額は公表されていない。

さらに最近では、一連の特許で、培養肉製品の環境への影響を一段と減らし、土地と水の使用量をさらに抑えるために、ゲノム編集技術「クリスパー」を活用する方針を明らかにした。

メンフィス・ミーツのような企業の影響により、将来は食肉生産バリューチェーンでの生産や食肉処理、加工のプロセスが減る可能性がある。

培養肉の日本企業

諸外国に遅れをとっているが、日本の培養肉市場は盛り上がりつつある。

ベンチャー企業だけでなく、日清食品のような大手企業も培養肉へ関心を向けている。

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培養肉日本ベンチャー企業

インテグリカルチャー

インテグリカルチャーは、2015年に創業された培養肉を扱う日本のスタートアップだ。

独自に開発した低コストな培養技術である「CulNet System」を強みとし、食品だけでなくさまざまな領域へ展開している。

CulNet Systemは、動物体内の環境を再現することができる装置である。

これにより、大規模かつ安価に細胞培養が可能だ。

日清食品

日清食品は東京大学の竹内昌治教授と培養肉の共同研究を行っている。

牛の筋細胞の培養過程でビタミンCを与えることで、成熟が促進されることを発見した。

また、筋細胞を立体的に培養することで、縞状構造を形成させることに成功し、厚みのある培養肉を実現可能だ。

2019年には、世界で初めてサイコロステーキ状の培養肉の開発に成功している。

しかし、まだまだサイズやコストなど解決すべき課題が山積みである。

日清食品は、2024年度中に「培養ステーキ肉」の基礎技術を確立することを目指している。

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