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植物工場のメリット・デメリット

植物工場は天候や外的要因に左右されないことや地域創生などメリットがあります。ここでは、植物工場のメリットやデメリットを客観的にまとめました。

植物工場とは

植物工場とは、室内で人工的に野菜を生産する施設のことです。

テクノロジーの力で光・温湿度・培養液・CO2などを人為的にコントロールして、野菜を大量生産できるようにしています。

管理が行いやすいためほとんどの植物工場が水耕栽培を行っています。

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植物工場とは アイキャッチ画像

植物工場の種類

植物工場には、太陽光利用型と完全人工光型の2種類があります。

太陽光利用型では、太陽光を利用し植物を成長させます。完全人工光型では、LEDや蛍光灯などの人工の光のみで植物を育てます。

完全人工光型

植物工場のイメージ画像
出典:日本GE株式会社プレスリリース

一般に、植物工場とは完全人工光型植物工場のことです。

完全に閉鎖した空間で植物を育てるため工業生産に優れています。

ラックを多段にすることで高密度で栽培することができるため、(株)日本GEによると一日約1万株のレタスが収穫可能です。

完全人工光型植物工場に向いている作物として、葉物野菜(小松菜・キャベツ・ネギなど)、ハーブ、小型根菜類(二十日大根・コカブなど)があります。

太陽光利用型(半閉鎖型)

太陽光利用型の植物工場は、ガラス室や温室などの半閉鎖環境で太陽光を光源として利用しながら、室内の環境をコントロールし作物を栽培する施設です。

その分、自然に左右される要素は増えますが、土壌の影響や害虫リスクを低減できます。

そのため、太陽光利用型植物工場には、土壌や病害虫によって生産性が落ちやすい作物が適します。

例えば、果菜類(トマト・パプリカなど)、葉もの野菜、ハーブ、ベリー類(イチゴ・ラズベリー・ブルーベリーなど)、コチョウラン、果樹(マンゴーなど)があります。

完全人工光型植物工場のメリット

次は、植物工場のメリットを見てみましょう。

ここでは、より植物工場としての特徴の強い完全人工光型植物工場に絞って紹介します。

一般的に植物工場として思い浮かべる完全人工光型植物工場のメリットについて紹介していきます。

計画的・安定的生産に優れている

完全人工光型植物工場のメリットは、気象条件に関わらず、計画的・安定的に生産できる点です。

環境省から「気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018」によると、年々、降水量100mmを超える大雨の日は増加している一方で、雨の日数は減少し真夏日・猛暑日の日数は増えてきています。

このように、露地栽培のリスクが高まっている状況下で完全人工型植物工場の注目度は高まっていくでしょう。

高速生産

収穫までの期間を短くできる高速生産性の高さは完全人工型植物工場の大きなメリットです。

植物の育ちやすい波長の光を照射することで、光合成を促進し植物を効率的に成長させることができます。

また、植物が光合成を行う瞬間にパルス照射を行うことで、少ない消費電力でより多くの植物を生産することができます。

このように、完全人工型植物工場ではエネルギーのロスを抑え高速に植物を生産することができます。

土地の高度利用

完全人工型植物工場は土地面積あたりの生産性の高さも大きなメリットです。

栽培棚を重ねることで、土地面積あたりの生産能力が露地栽培の100倍以上になることがあります。

光源を植物の直上に設置できる植物工場ならではの利点です。

露地栽培と比べて少ない知識で運営できる

植物工場の環境制御で気を付けるべき要因は、露地栽培に比べて少ないです。

露地栽培では自然を相手にするので、気候・土壌・害虫について膨大な知識が必要となります。一方、植物工場で制御する要因は光・空調・培養液のみと、必要な知識も少なく運営しやすいです。

加工工賃が安く済む

植物工場では、土や農薬を使わないため、そのまま出荷できる状態で植物は成長します。

よって、水洗いなどの加工を省略でき、人件費を安く抑えることができます。

また、無駄になる水や肥料が露光栽培と比べて圧倒的に少ないため、その分の経費を削減することができます。

栄養素や機能性をコントロールできる

植物工場では、植物の病原体やストレス耐性を考慮する必要がないため、植物の栄養素や機能性をコントロールする品種改良を行いやすいです。

例えば、ビタミン・カロテン・ポリフェノールなどの特定の機能性成分が高い品種や生活習慣病の原因として知られる活性酸素の除去作用が強い品種の開発が進んでいます。

病害虫や汚染の遮断による高い安全性

植物工場では、病原虫や汚染の遮断による高い安全性もメリットの1つです。

英科学誌ネイチャージオサイエンスによると、世界の農耕地の3分の2に農薬汚染の危険性があります。

農薬で汚染された土地で育った植物は、体内に入ることで健康被害を起こすことがあります。

植物工場では、病原虫による影響が無いため、農薬を使う必要もありません。

また、植物工場で育った野菜は、露地栽培で育ったものと比べて、生菌数が100分の1といわれています。

植物工場の野菜は健康被害リスクが少ないだけでなく、野菜の劣化のリスクも少ないといえます。

労務負担の軽減

植物工場は労務負担が少ないこともメリットの1つです。

露地栽培では、天候や植物の状態、季節によって臨機応変に対応しなければなりません。

一方、植物工場では、栽培装置の管理のみとマニュアル通りに作業するだけです。

出荷時も、水洗いなどの作業工程を省略できるので、負担が少ないです。

都市部での栽培

植物工場は都市部で栽培できるメリットもあります。

完全人工光型植物工場は、設備と技術さえあればどこでも栽培することができます。

野菜の消費が多い都市部で栽培することで輸送費を削減することができます。

市場規模の拡大が見込める

植物工場の市場規模推移
出典:矢野経済研究所

植物工場の市場規模は、年々拡大しており、今後もその傾向は続くと予測されています。矢野経済研究所の調査によると、完全人工光型植物工場の市場規模は、2019年度では約85億円。

2024年度には、約360億円に達すると予測しています。

遊休施設の利用による地域創生

植物工場は、遊休施設を有効活用することで地域創生につながります。

地方では、使われていない施設(遊休施設)を有効に活用することが課題です。

遊休施設を植物工場にすることで、地域の雇用を確保し、地域経済の活性化を狙えます。

植物工場を運営する側にとっても、新たに建物を建てるのではないため、初期費用を抑えることができます。

国の認可を受けた上で食用以外の野菜の栽培も可能

食用ではない、ワクチン原料を含んだ植物もあります。

医療分野では、ワクチンを安定して供給するために植物工場に着目する動きが進んでいます。

植物工場であれば、ワクチン原料となる植物を安定して短期間で栽培できます。

国の許可を受ければこれらの野菜の栽培が可能になります。

重労働が少ないことから高齢者の生きがいづくりへの一助

植物工場は、障がい者や高齢者の就労施設としての役割も期待できます。

簡単な作業で運営でき、作った野菜を地域に販売することでやりがいをもつことができます。

また、植物には癒し効果があるいわれており、福祉面でのメリットも。

このように、植物工場を通して仕事を引退した人に新しい生きがいを感じてもらうことができます。

完全人工光型植物工場のデメリット

さまざまなメリットがある完全人工型植物工場にもデメリットは存在します。

高額な初期投資

植物工場のデメリットの1つ目は、初期投資が高額であることです。

もともとある建物を利用した場合でも最低1億円が必要だといわれています。

これは、個人・家族経営では難しい額でしょう。

しかし、初期費用は、余計な設備を見直すことでいくらか減らすことができます。

運用コストがまだまだ高い

また、電気代や人件費が高い点もデメリットです。

植物工場では、常にエアコンやランプを使用していては電気代が高くなります。

今後、植物の成長に関わらない部分の電気の浪費を防いで行くことが重要です。

栽培品目が少ない

植物工場のデメリットの3つ目は、栽培して利益が出やすい品種が少ないことです。

レタスについては栽培方法が確立している一方で、より高収益な野菜の栽培ノウハウが確立していません。

生産コストが露地栽培にかなわない

植物工場では、とにかくコストがかかります。

そのため、露地栽培の野菜より価格を高く設定しなければならなくなってしまいます。

高度な分業化が必要な場合も

植物工場では、高度な分業が必要なケースがあります。

植物工場での労働には、体力や知識は必要ありません。

しかし、機械を操作したり植物の状態をチェックしたりと作業の種類は多いです。

どうしても労働者を教育・管理する手間がかかってしまいます。

完全人工光型植物工場の今後の展望

高付加価値な品目に絞る必要がある

植物工場では、付加価値の高い品種に絞って栽培する必要があります。

重量当たりの価値が安ければ、コストを上回る売り上げを得られません。

電気代を下げる必要がある 参考

植物工場にかかるコストの内、大きな割合を占めるのが、電気代です。

エアコンや照明、ポンプ、ファンなど多くの設備で必要とし、原価の約3割を電気代が占めています。

農業との棲み分け

植物工場の普及により、農業と植物工場がどう付き合っていくかという問題が将来的に起こり得ます。

植物工場の市場規模は拡大すると既存の農業と競合が起こります。

もし、既存の農業が圧迫されれば、その従事者の職を奪ってしまうことになりかねません。

太陽光利用型のほうがおすすめ

太陽光利用植物工場は、完全人工光型植物工場と違い、照明にかかる電気代が不要です。

電気代は、完全人工光型植物工場の原価の3割を占めます。

それを節約できる点で、太陽光利用型植物工場はおすすめです。

オランダは、早くも1970年代から太陽光利用型植物工場に注目していました。

その生産性はどんどん高くなり、世界中でオランダ式の太陽光利用型植物工場が普及しています。

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