最近よく耳にする植物工場ですが、「人工で植物を育てるなんてコストがかかりすぎてビジネスになるはずがない」と思っていませんか?
本当に事業として成り立つのか、成功している例はあるのかと気になっている方のために、いくつかの事例をまとめたので、参考にしてください。
植物工場の特性である安定した生産を生かして、本来不安定な品質の作物を栽培したり、IoTなどの技術を生かして費用を抑えることに成功している事例がいくつかあります。
植物工場とは
植物工場とは、室内で人工的に野菜を生産する施設のことです。
テクノロジーの力で光・温湿度・培養液・CO2などを人為的にコントロールして、野菜を大量生産できるようにしています。
天候や季節、土壌による影響が少なく安定して年中生産することができます。
昨今の異常気象の増加も相まって注目が集まっており、植物工場の市場規模は、年々拡大傾向にあります。矢野経済研究所の調査によると、完全人工光型植物工場の市場規模は、2019年度では約85億円。2024年度には、約360億円に達すると予測しています。
近年、異常気象の影響で農作物の値上がりが続いています。 自然の力を借りて行う農業は、どうしても天候などの環境要因で生産量が左右されてしまいます。 しかし、植物工場では環境を完全に制御された、まるで工場のような閉鎖的な空間で、農[…]
植物工場企業の成功事例
それでは、実際に植物工場企業の成功事例を紹介します。
N.BERRY
最初に紹介するのは、NTT西日本グループが販売しているイチゴ「N.BERRY」です。
N.BERRYとは、農業の振興やSDGs達成を掲げてNTT西日本が販売するイチゴです。
植物工場に高度なICT技術を応用している点が特徴的です。
加えて、イチゴ産地であるJA高知県佐川支所苺部会と連携し開発を行われてい
るため、その味も広く認められています。
イチゴの旬は1月下旬から3月上旬と短いが、
植物工場で栽培することで1年中いつでも旬のイチゴを供給できます。
N.BERRYは2021年8月10日から「hanafru 近鉄あべのハルカス店」で販売されています。N.BERRYを使ったスイーツを食べみたい方は、「モンシェール あべのハルカス近鉄本店」をおすすめします。
MIRAI
MIRAIは、植物工場にIoTの技術を取り入れることでデータを収集し効率的な運営に成功している企業です。IoTとは、別名モノのインターネットと呼ばれ、様々な「モノ」がインターネットに接続され、情報交換することにより相互に制御する仕組みです。
MIRAIでは、収量が少ない場所にセンサーを置くことで、日々の温度、湿度、二酸化炭素量、流量、電気伝導度などのデータを集めています。
このようなIoTにより集めたデータを可視化することで「収穫量の予測」と「原因追求」を行うことで、効率的な植物工場の運営を実現しています。。
また、集めたデータから得られるノウハウを国内外に収めるというビジネスも展開しています。
Vege-Factory(ベジファクトリー)株式会社
次に紹介するのも植物工場を運営する企業「ベジファクトリー」です。
ベジファクトリーは、もともと空調設備や塗装システムで世界的に有名な企業でした。
培ってきた空調技術や海外拠点ネットワークを生かしているのが特徴です。
さらに、同社はパートナー企業と連携してトータルソリューションを行っています。
農業のノウハウを持たない企業では、植物工場を建てるだけでは効率的な運用はできません。
同社はそういった企業などを対象に総合的に支援しています。
2019年6月時点で、同社は国内に5か所の工場を完成させ、すべて黒字化を成功させています。
インターナショナリー・ローカル株式会社
インターナショナリー・ローカル株式会社は、コスト削減が難しいとされる小規模な植物工場での黒字化に成功しています。
植物工場の7割以上が赤字とされており、数少ない成功事例は大規模施設によるリーフレタスの生産に留まっています。
同社は、レストランやスーパーなどの消費地・販売地にて生産する地産地消型の植物工場を運営することで黒字化を達成しています。
このような小規模・黒字化ノウハウを活かして、設備設計から施行まで一貫したコンサルにより、植物工場市場の拡大に貢献しています。
デリファーム株式会社
2021年6月から新たに参入した企業が、デリファーム株式会社です。
植物工場と相性がいいレタスをメインの商品ラインナップとしています。特に、飲食店で人気のあるクリスピーレタスやレタスミックスを販売しています。
11月からカフェや創作料理店から要望のあったパクチーの生産も試験的に行っています。
独特な味への需要が高い一方で、露地栽培では価格・品質の不安定さがネックのパクチーは、より安定した供給を行える植物工場との相性がとても良いです。
同社は、野菜の生産から飲食店への配送まですべて行っているので、飲食店からの意見を活用できることが大きな強みでしょう。
東洋紡エンジニアリング株式会社
上場企業の東洋エンジニアリングは、生産コストの削減などで大きな実績をあげています。2011年に植物工場事業に参入してから、たった7年で生産コストを従来の半分、単位面積当たりの生産性を倍にしたという素晴らしい実績があります。
巣ごもり需要などによってサイズの大きい野菜の消費が増えていることを背景に、大きいフリルレタスやグリーンリーフを栽培しています。
これによって収穫の手間を省けるので、高い生産性を保つ要因の1つになっています。
すでに国内外で14か所の植物工場を設計・施工しており、植物工場事業の成功事例の一つです。
会社のウェブサイトでバーチャル工場見学の動画をアップしているのでご覧ください。