環境面で良いことずくしの代替肉ですが、そんな代替肉にもデメリットはあります。
本物の肉に近づけるため、遺伝子組み換え技術を用いていたり添加物を多く含む商品が販売されています。また、普及にともなって森林破壊が進むことも。
より良い代替肉を選ぶため、私たち一人一人が代替肉のデメリットを把握していくことが重要です。
代替肉とは?
代替肉とは、動物由来の肉の代わりとなる食品のことです。
一般的にはたんぱく質を多く含む植物原料を加工した植物肉があります。その他にも、動物の細胞を培養して得られる培養肉や、コオロギなどのたんぱく質を多く含む昆虫食があります。
今回は、植物由来の代替肉のデメリットについて洗い出していきます。
代替肉が普及する上での問題点やデメリットと、私たちが生活で代替肉を食べる上での問題点やデメリットの二軸でまとめました。
代替肉が普及する上での問題点やデメリット
製造コスト大のため値段が高い
代替肉の値段の高さが普及の足枷となっています。植物由来の代替肉の製造では、原料から消費者の手元に届くまでの工程が分業される傾向にあります。そのため、最終価格も高くなり本物の肉より高価になります。
また、原料である大豆価格の高騰も原因の一つです。日本農協新聞によれば、2019年まで8〜10ドルだった大豆相場は、2020年末に16ドル台まで上がり2022年も高値が続いています。
大豆の輸送にかかる海上運賃も高値が続いており代替肉の製造に関わるさまざまなコストが増えています。
実際、2022年12月時点における大手スーパーであるトップバリュの代替肉を用いたハンバーグの価格は、通常のハンバーグと比較して約1.7倍も値段が高いです。
代替肉の認知度が低い
代替肉の知度は高まっていますが、その分「値段が高い」「美味しくない」といったイメージにより代替肉を手に取る人が少ないことも問題です。
マイボイスコムの調査によると、スーパーのチラシを見る割合は増加傾向だとしています。
LINEリサーチのアンケートでも、代替肉を知っている人は80%を超えています。しかし、実際に食べたことがある人は約10%です。
まずは代替肉のイメージを改善し、実際に手にとってもらうことが重要です。
森林破壊が拡大する危険性がある
代替肉の普及により畜産業によるCO2排出削減の効果がある一方で、代替肉の原料として使用する大豆の増産も環境問題となる恐れがあります。
食肉増産に伴う大豆畑の拡大は、世界の森林破壊の4大要因の1つとされています。また、大豆生産に従事する人が、極端な低賃金で働いている問題も指摘されています。
そのため、各代替肉企業は森林を破壊した農地で栽培していないかや、労働条件等で人権侵害がないかなど確認することに取り組み始めています。第一集荷場所までのトレーサビリティー(生産履歴の追跡)を確保された作物を使用することで代替肉の普及に伴うデメリットを抑えることができます。
私たち消費者も、産地が森林破壊により環境問題が大きくなっている南米産の大豆を使用していないか注意しましょう。
畜産業が衰退する
代替肉の普及により食肉の需要が少なくなると畜産業の衰退の恐れがあります。
2019年に報告したATカーニーのレポートでは、2040年には肉類市場全体の売上に占める食肉の割合は40%まで減少し、代わって培養肉が35%、植物由来の代替肉が25%を占めるまでに成長すると予測しています。
このように、従来の動物由来の肉の需要が減ることで、畜産業での雇用が失われることが予測できます。
また、家畜は食肉としてだけでなく革製品や潤滑油として利用されていますが、これらの製品の供給が難しくなってしまうでしょう。
私たちが代替肉を食べる上での課題点やデメリット
健康に悪い添加物入っている可能性がある
代替肉に使われる添加物として着色のため使用されるカラメル色素があります。
カラメル色素は、米国の研究によると発がん性があることがわかっています。
また、食肉を再現するために甘味料や保存料などさまざまな添加物が使われています。
環境への関心の高まりとともに、近年注目されるようになってきました代替肉。一方で、代替肉に含まれている添加物の体への影響や安全性を懸念する声もあります。 代替肉は、どのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。 実際[…]
代替肉の栄養バランスは必ずしも良くない
植物由来の代替肉は、コレステロールを含まずたんぱく質が多く健康的といわれています。しかし、カロリーや飽和脂肪酸は食肉と変わりません。
また、含まれるたんぱく質のアミノ酸スコアが低いことはデメリットの一つです。たんぱく質の評価は、必須アミノ酸の量とバランスで決まります。食肉のアミノ酸スコアは100であるのに対し、植物由来の代替肉に使用される大豆は86です。
必須アミノ酸が不足すると、筋力や免疫力が低下するといった様々な問題が生じます。
100gあたり | 食肉(赤身85%,脂肪15%) | 代替肉(ビヨンド・バーガー) | 代替肉(インポッシブル・バーガー) |
カロリー | 212kcal | 221kcal | 212kcal |
飽和脂肪 | 5g | 5g | 7g |
コレステロール | 71mg | 0mg | 0mg |
ナトリウム | 71mg | 345mg | 327mg |
たんぱく質 | 19g | 18g | 17g |
大豆イソフラボンの過剰摂取になる可能性がある
植物由来の代替肉製品の多くは大豆を原料としています。
そのため、動物性の肉を代替肉に置き換えることで、大豆イソフラボンの取りすぎとなる恐れがあります。
大豆イソフラボンの1日の上限摂取量は70~75mgとされています。
大豆100gあたり140mg含まれている大豆イソフラボンが、加工により半分と仮定した場合でも上限摂取量ギリギリとなってしまいます。
国立がん研究センターの研究によると、大豆イソフラボンの取りすぎにより前立腺がんのリスクを高めるとされており、代替肉の中でもとくに大豆肉については注意して食べる必要があります。
原料に遺伝子組み換え作物を使用している可能性がある
植物由来の代替肉製品のなかには、遺伝子組み換え作物を使用しているものがあります。
実際に、米インポッシブル・フーズは遺伝子組み換え作物を使用しています。インポッシブル・バーガーの肉感の再現は、遺伝子組み換えされた酵母が作る「ヘム」が大きく関わっています。
遺伝子組み換え技術は、多くの国において食品規制の対象に当たることから、インポッシブル・フーズは、米国、カナダ、香港、マカオ、シンガポール、アラブ首長国連邦のみ展開しています。
日本国内においては、意図せず遺伝子組み換え食品を食べることを避けるため、2023年4月1日から新たな遺伝子組換え表示制度が施行されます。
より分かりやすい形で遺伝子組み換え作物を使用しているか判断できますので、購入前にチェックが必要です。
危険な農薬が残留している場合がある
一部の代替肉中にグリホサートという除草剤が混入していたことが報告されています。
米インポッシブル・フーズのインポッシブル・バーガーには、11.3 ppbもの量のグリホサートが混入していました。
イギリスでの研究によると、グリホサート0.1 ppbで肝臓、腎臓の遺伝子機能を変化させ、 健康に悪い影響があることがわかっています。
ビヨンドミートの代替肉にも1.0 ppbのグリホサートが含まれていたことも報告されており、代替肉を食べる際は注意が必要です。