コオロギは栄養価の高さや環境に優しく養殖できるメリットから昆虫食として世界で注目を集めています。
本記事では、食用コオロギのメリットや開発されているさまざまな製品、日本および世界で活躍している食用コオロギの養殖企業や販売サイトを紹介しています。
昆虫食におけるコオロギとは
昆虫食とは、昆虫を食べることです。FAOの報告によると、世界で食べられている昆虫は1,900種類以上あります。
その中でも、コオロギは中国や台湾、ベトナムやラオスなど東南アジアや、アフリカの中南部で食べられています。
昨今では、たんぱく質クライシスや地球温暖化の問題から、アメリカやカナダでも食用コオロギの開発が進んでいます。
コオロギ以外にもさまざまな昆虫が食用として注目されています。以下の記事でチェックできます。
食用昆虫の種類 FAOの報告によると、世界で食べられている昆虫は1,900種類以上とされています。 そのうち、日本では大正時代より55種類の昆虫を食べていた記録が残されており、イナゴやスズメバチ類の幼虫は美味[…]
食用コオロギの味
コオロギはは節足動物です。甲殻類であるエビやカニに近い香ばしさのある風味が特徴です。ナッツの味と似ていると感想をもつ方も多く美味しく食べることができます。
無印良品などで販売されているコオロギせんべいは、エビせんに近い味がします。
食用コオロギのメリット
昆虫食における食用コオロギのメリットは大きく5つあります。
豊富な栄養と効能がある
コオロギは、たんぱく質やビタミンを多く含みます。
可食部100gのコオロギには、20.1gのたんぱく質が含まれます。牛肉100gに含まれるたんぱく質の量が20.6gですので、牛肉と同程度のたんぱく質を含むことがわかります。一方で、脂質は可食部100gのコオロギに5.06gのみ含まれ、豚肉100gに含まれる脂質12.4gと比較して半分以下です。
コオロギを食べることで、牛肉や豚肉に含まれないビタミンCやビタミンA由来の効果を得ることができます。また、コオロギには食物繊維であるキチン質を含み、腸内環境をきれいにする効果も期待できます。
養殖に向いている
コオロギは、雑食性が高く小さなスペースで生産可能です。そのため、少ない設備投資で養殖が可能です。また、卵から成虫になるまでに要する期間が45日と生産サイクルが短期間であることから、大量生産の可能性があり養殖に向いています。
環境にやさしく生産できる
コオロギは畜産業と比較して環境負荷が小さく生産できます。牛肉の可食部1kgを生産する場合、25kgのエサが必要です。コオロギの場合、可食部1kgを生産するために必要なエサの量は、2.1kgです。このように少ないエサで生産可能であるため、エサを作るのに必要な水やエネルギーが少なく環境負荷が小さいです。
実際、飼育時やエサの生産に必要な水の量は、牛肉の可食部1kgの生産の場合、22,000L、コオロギの可食部1kgの生産の場合、420Lと少ないです。
粉末化など加工がしやすい
コオロギは、粉末化によるコオロギパウダーなど加工がしやすいです。そのため、昆虫そのものの見た目が苦手な方に向けた製品開発が可能です。
さまざまな食品と味の相性が良い
食用コオロギの甲殻類特有の香ばしい味わいは、そのまま食べるだけでなくさまざまな食品と合わせて楽しむことができます。
食用コオロギパウダーを使ったお菓子だけでなく、ラーメンやうどんなどの麺類に練り込んだ製品が開発されています。
おすすめの食用コオロギ製品
コオロギのパウダー化など加工のしやすさを生かした製品がさまざま開発されています。
メジャーな食用コオロギ製品は以下の通りです。
- コオロギチョコレート
- コオロギせんべい
- コオロギクッキー
- コオロギプロテインバー
- コオロギスナック
- コオロギラーメン
- コオロギうどん
コオロギチョコレート
味は甘さ控えめなチョコレート。コオロギの食感も楽しみたい方におすすめです。
コオロギせんべい
オーガニック認証を受けたカナダ産のカマドコオロギを使用したせんべいです。粉末化したパウダーを練り込んでいるため、昆虫の見た目が苦手な人におすすめです。
コオロギクッキー
コオロギパウダーを練り込んだバタークッキーです。コオロギの風味がバターの香りを引き立て、芳醇な味わいを演出しています。
コオロギプロテインバー
コオロギの豊富な動物性たんぱく質に着目したプロテインバーです。プロテインバー独特のクセを感じないチョコレート味です。
コオロギスナック
食用コオロギ粉末を使用したスナック菓子です。昆虫食初心者でも抵抗なく食べることができるラーメン味のお手軽スナックです。
コオロギラーメン
スープに食用コオロギパウダーを加えたラーメンです。100%コオロギ油が付属されており、追いコオロギを楽しむことができます。
コオロギうどん
1食分に100匹分のヨーロッパイエコオロギの粉末を練り込んだうどんです。かつお・しいたけ・昆布などの旨味たっぷりのスープがコオロギ麺の味わいをぐっと引き立ててくれる一品です。
日本のコオロギ昆虫食の現状
日本の食用コオロギの養殖会社
昨今の昆虫食の盛り上がりから、日本でも食用コオロギの養殖に取り組む企業は多くあります。
BugsWell株式会社(バグズウェル)
BugsWell株式会社(バグズウェル)は、2021年の1月に設立された企業です。
当初は、民家で試験的にフタホシコオロギの養殖を始め、約15万匹までに増加させたことで話題になりました。
BugsWell株式会社では、生産したコオロギを粉末状に加工し出荷・販売まで行っています。
近年ではクラウドファンディングサイトにてコオロギチョコレートの販売などを手がけています。
株式会社Gryllus(グリラス)
グリラスは、徳島大学発のフードベンチャー企業です。
食用コオロギを環境負荷の少ない循環型食品としての普及に取り組んでいます。特に、アルビノ系統のコオロギの量産化に向けて自動飼育システムの開発も進めています。
グリラス 代表の渡邉さんは、農林水産省によるフードテック官民協議会のサーキュラーフード推進ワーキングチーム代表を務めるなど様々な方面で活躍しています。
株式会社BugMo(バグモ)
BugMoは養殖システムの設計開発や商品開発を通し、エコなたんぱく源であるコオロギの普及に取り組むベンチャー企業です。
機械学習やブロックチェーン技術などの先端テクノロジーを駆使することで国内産コオロギの安定供給を可能としています。
また、生産技術だけでなく商品デザインやマーケティングなどの販売にも強みをもち、昆虫食文化の再構築を目指しています。
太陽ホールディングス株式会社/太陽グリーンエナジー株式会社
太陽ホールディングスはコンピュータをはじめ電化製品に使われるプリント配線板を開発する総合化学メーカーです。
グループが掲げる世界に取り組むべき課題「食糧」をもとに、コオロギで食糧問題に取り組む新しい挑戦をしています。
2018年6月に福島県に飼育研究施設を建設。同年9月には、東北サファリパークと共同研究し、魚や動物の餌としての開発を進めています。
2020年8月にオンラインショップ「TAIYO Green Farm Cricket」にて、飼料用コオロギの販売を開始しています。
当初は社屋の廊下での養殖を行っていましたが、現在では福島県と埼玉県で研究を行っています。
ACORN徳の風プロジェクト株式会社
ACORN徳の風プロジェクトはレストランやコンビニなどの廃食用油を無料回収・買取しているリサイクル会社です。
2018年頃から「どんぐりを食べて育ったコオロギ」というブランド化を図り、食用コオロギの生産を開始しました。
日本の食用コオロギの販売サイトやブランド
食用コオロギの製品を販売している企業やサイトを紹介します。
TAKEO(タケオ)
TAKEO(タケオ)は2014年創業、日本初の昆虫食専門ショップです。ECサイトでは輸入商品だけでなくTAKEO開発の昆虫食商品を販売しています。大学との食用コオロギの養殖に関わる共同研究や実店舗も運営しており、昆虫食の普及に大きく貢献しています。
bugoom(バグーム)
bugoom(バグーム)とは、日本サプリメントフーズ株式会社が昆虫(bug)を食材として発展(boom)させることを目的に立ち上げた昆虫食ブランドです。
公式オンラインショップおよび実店舗にて食用コオロギ製品を販売しています。
BugsFarm(バグズファーム)
BugsFarm(バグズファーム)は、食用コオロギのほか450種類以上の昆虫食を取り扱う日本最大級の昆虫食通販サイトです。
昆虫食製品の原料の卸から販売、商品企画などを行っています。
FUTURENAUT(フューチャーノート)
FUTURENAUT(フューチャーノート)は、「持続可能社会の実現のために、ミライの食を提案」をテーマに、コオロギプロテインの原料調達や、FUTURENAUTオリジナルの食用コオロギ商品をオンラインサイトで販売しています。
また、大学ベンチャー独自の研究力を生かして受託研究や製品開発を行っています。
無印良品
無印良品では、徳島大学の研究をベースに量産された食用コオロギを活用してコオロギチョコやコオロギせんべいを販売しています。
世界のコオロギ昆虫食の現状
世界で活躍する食用コオロギ企業
世界でも食用コオロギの養殖や製品開発が活発に取り組まれています。
Entomo Farms (カナダ)
Entomo Farms(エントモ・ファームズ)は、カナダ・オンタリオを拠点とする北米最大の食用コオロギ養殖企業です。
さまざまな食用コオロギ商品を開発しており、コオロギパウダーを用いたクッキーやマフィン、スムージを販売しています。
日本では、パートナー企業の「株式会社 昆虫食のentomo」が食用コオロギの卸販売をしています。
Aspire Food Group(米国)
Aspire Food Group(アスパイアー・フード)は、アメリカ・テキサス州を拠点とする食用コオロギ養殖企業です。ロボット工学や自動データ収集などの技術を活用し、通常の3分の1の期間で、通常よりも50%大きな食用コオロギを養殖しています。
2018年3月には、コオロギパウダーを使ったプロテインバー事業を買収し、急拡大しています。
All Things Bugs LLC (米国)
All Things Bugs LLC(オール・シングズ・バグズ)は、米国をリードする食用昆虫卸企業です。
All Things Bugs LLC の創設者である Aaron T. Dosseyは、食用昆虫の生産および商品開発における世界的パイオニアです。
Global Bugs Asia Co., Ltd(タイ)
Global Bugs Asia Co., Ltd(グローバル・バグズ・アジア)は、タイ投資委員会の認可を受けたタイとスウェーデンの食用コオロギ企業です。
コオロギの養殖からコオロギパウダーへの加工まで、Global Bugs Asia社の工場で一貫して行っています。それにより、高い国際標準レベルをクリアした食用コオロギを北米などに輸出しています。
JR Unique Foods Ltd(タイ)
JR Unique Foods Ltd(JRユニーク・フーズ)は、2003年よりタイのウドンタニを製造拠点とする食用昆虫企業です。
JR Unique Foods Ltdの主力製品であるコオロギパウダーは、Amazonのカテゴリで 1 位にランクされています。OEMサービスも世界中に展開しており、JR Unique Foods のコオロギは日本でも販売されています。
食用コオロギの問題点やデメリット
昆虫食として食用コオロギを食べる際の注意点やデメリットがあります。
今後の普及に向けて超えていく課題をまとめました。
甲殻類アレルギー
甲殻アレルギーを持つ方はコオロギを食べることは控えましょう。昆虫のアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)は、エビやカニなどの甲殻類と似たものを持っています。
アレルギーを持っていない方もまずは少量から昆虫食を始めると安心です。
寄生虫を含む可能性
肉や魚と同様ですが、吸虫や条虫などの寄生虫による食中毒の危険性はあります。昆虫食においても肉や魚同様に十分加熱処理が必要です。
生態系への影響
コオロギの養殖時に脱走し生態系に影響を与える可能性があります。
食用として養殖されるコオロギの種類として、エンマコオロギやフタホシコオロギ、ヨーロッパイエコオロギやジャマイカンコオロギがあります。
フタホシコオロギは奄美大島 、沖縄などの亜熱帯地域に生息している種であり、ヨーロッパイエコオロギは外来種です。
今後、食用コオロギの養殖が日本全国で行われ、これらの種類のコオロギが脱走すると生態系に影響を与えてしまう恐れがあります。
生産コストが高い
食用コオロギの多くはタイなど東南アジアからの輸入が大半です。そのため輸入コストがかかる現状にあります。
また、日本においても確立された養殖方法はありません。コオロギの生産に必要な温暖な気候を室内で保つためのエネルギー管理や、水替えなどが効率的とはいえません。
そのため、生産コストが高く最終製品の価格も高い傾向にあります。