本記事では、昆虫食に関する日本の歴史やおすすめ商品、そして昆虫食を研究、開発している団体を紹介します。
昆虫食とは
昆虫食とは、昆虫を食べることです。日本では、古くから昆虫食の文化があり、さらなる普及のため官民が手を取り合い活動を続けています。
昆虫食は未来の持続可能な食習慣として注目を浴びています。この記事では、昆虫食がなぜ日本で注目されているのか、優れた環境性や食糧供給の安定性などのメリットを探求します。 昆虫食とは何か? 昆虫食とは、昆虫を食材として利用する食習慣のことで[…]
日本の昆虫食の歴史
江戸時代から昆虫食の文化はあった
全国的にイナゴが食べられていたことが、江戸時代の書物に記録されています。
炙り焼きや蒲焼など、様々な調理法でイナゴが食べられていたようです。
書物 | 年代 | 調理法 |
本朝食鑑 | 1697年 | あぶり焼き佃煮 |
守貞漫稿 | 1853年 | 蒲焼佃煮大和煮甘露煮 |
大正時代まで昆虫食が盛んだった
1919年に三宅恒方がまとめた「食用および薬用昆虫に関する調査」にも、昆虫を食べていた記録が残っています。
55種の昆虫を食用とし、123種を薬用として使っていました。
いなごや蜂、蛾など様々な昆虫が食べられていました。
昆虫の調理法は甘露煮や佃煮が多かったようです。
昭和に入り昆虫食は衰退した
昭和時代には、農薬や洋食文化が発展し、昆虫食は衰退していきます。
しかし、戦時中は食料が手に入らず、昆虫が貴重な栄養源となっていたようです。
1950年代の東京でも食料品として昆虫が売られていました。
太古の昔から人類にとって貴重な栄養資源でもあり、昆虫食は、今よりもっと身近な存在でした。世界各地で食べられ、日本でもその歴史は深いです。 この記事ではそんな「昆虫食」を、私たち人間にとっていかに身近な存在だったのか。歴史からひもとき[…]
昆虫食の衰退理由とは
食用コオロギの研究を行っている、お茶の水女子大学の由良教授は、「人類は、昆虫を諦めたのではないか」と表現しています。
野生の昆虫を1匹ずつ集めるのは労力と時間が必要です。
しかし、牛や豚を家畜化していれば、面倒な昆虫集めをする必要がなく、効率的にタンパク源を確保できます。
日本の昆虫食が衰退した原因は、時代の流れと合理化のせいだったのかもしれません。
日本の昆虫食の現状
日本トレンドリサーチは、2022年に昆虫食に関するアンケート調査を800人に対し行いました。参考
調査では、昆虫を食べた経験がない人が、約7割の559人に上る結果となりました。
昆虫を食べた経験がない人の内、9割の人が「今後も昆虫を食べたくない」と回答しています。
食べたくない理由として挙げられるのが昆虫のビジュアルです。
粉末状にすれば受け入れやすくなりますが、アレルギーを引き起こす危険性があります。
昆虫食は、拭い切れない恐怖心が購買意欲を上回ってしまうので、普及スピードが上がらない現状があるのかもしれません。
日本で食べれるおすすめ昆虫食
コオロギチョコ(無印良品)
2020年にコオロギせんべいがヒットした、無印良品2つ目のコオロギ商品です。
コオロギパウダーとミルクチョコを混ぜ合わせたバータイプのチョコレートです。
大豆パフによるザクザクした食感が楽しめるチョコレートには、タンパク質が15g含まれています。
無印良品のホームページではコオロギの特集を組み、なぜ今コオロギなのかを訴えています。
コオロギチョコを子供と食べながら、将来の世界について話し合うのも良いかもしれません。
ミックスバグズ 15g 塩味(thailand unique)
タイランドユニーク社のミックスバグズは、Amazonで人気があります。
ミックスナッツのように、塩で味付けされたバッタやコオロギ、ザゴワーム(幼虫)などを一度に楽しむことができます。
そのなかでも、サゴワームはクリーミーな味わいなため、お酒との相性は抜群ですね!
ヨーロッパイエコオロギ(bugoom)
昆虫食専門店のbugoom(バグーム)のスタッフが、一番おいしい昆虫としてヨーロッパイエコオロギを1位に選んでいます。
コオロギの味や風味は、エビに似ているため、昆虫食初心者にも食べやすいです。さらに、ヨーロッパイエコオロギは、大きさが1〜2cmと小さめなので、スナック感覚でサクサク食べられます。
日本の昆虫食企業
TAKEO(タケオ)
2014年創業のTAKEOは、昆虫食の開発から販売までの一連の工程を一括管理しています。
ホームページから購入でき、東京都台東区の実店舗では、昆虫食のカフェメニューが楽しめます。
2019年には、弘前大学と連携して始めたバッタの養殖事業「むし畑」が、都の経営⾰新計画として認定されました。
TAKEOは、難しい話は抜きにして、まずは昆虫食の魅力に気付いてほしいと様々な形で情報発信をしています。
bugoom(バグーム)
バグームは、健康サプリメントを販売している「日本サプリメントフーズ」の昆虫食専門ブランドです。
昆虫食の魅力を広めるため、2019年にバグームを立ち上げました。
バグームは、福岡市にある実店舗と通信販売で様々な昆虫食を購入できます。
サソリやアリ、タランチュラなど、好奇心をくすぐる商品もあります。
一食に100匹分のコオロギパウダーが練り込まれた「コウロギうどん」も興味深い一品ですね。
バグームのホームページでは、昆虫の実食レポートや、ダイエットに最適な昆虫など、昆虫食に関わる様々な情報を提供しています。
ellie(エリー)
2018年創業のエリーは、カイコの加工食品を取り扱っています。
カイコには、タンパク質の他にも、ビタミンやミネラルが豊富に含まれているそうです。
2022年の1月から、エリーは敷島製パン(Pasco)と提携して、カイコパウダーを使ったクロワッサンとマドレーヌを販売しています。
カイコはベトナムで養殖され、これまで捨てられていたキャッサバの葉をエサにしているので、サステナブルに育てられています。
カイコにスポットを当てたエリーの商品は、公式サイトから通信販売ができます。
ハイジェントテクノロジー株式会社 山形工場
東京に本社を置く金属加工会社のハイジェント株式会社の山形工場では、2021年から昆虫の養殖を始めています。
環境に配慮した新事業として立ち上げた場所は山形県新庄市。
新庄市は、コオロギのエサと水が豊富で、養殖に必要な土地にも困らないので、コオロギを飼育できる環境が整っていました。
今後は、養殖に必要な電気を再生可能エネルギーでまかない、サステナブルな飼育環境を目指すとしています。
ちなみに、養殖したコオロギは、先ほど紹介したTAKEOで「山形こおろぎ」として販売されています。
日本の昆虫食研究機関
昆虫ビジネス研究開発ワーキングチーム(iWT)
循環型の食料供給システムの構築を実現するため、2020年にフードテック官民協議会が設立されています。
フードテック官民協議会の作業部会の1つがiWTです。
iWTは、昆虫を使った食料、飼料生産に関連する情報を集めています。
集めた情報を元に、食料と飼料にガイドラインを設定し、安全性の確保を目指しています。
安全性が確保されれば、安定した流通、販売が実現し、昆虫食の市場は広がりを見せるかもしれません。
昆虫ビジネス研究開発プラットフォーム(iBPF)
71の企業や大学(2021年9月時点)が連携して、昆虫の研究開発に取り組む団体がiBPFです。
iBPFは、産業利用を目的とした、昆虫の科学的なデータをiWTに照会しています。
ミズアブが食品ロスをエサにして育つ過程や、新種のトビケラに見られる特徴など、様々なiBPFの研究成果がiWTに情報提供されます。
iWTは、昆虫の情報を元に協議し、ガイドラインを確定します。
iBPFはiWTと連携し、昆虫食を持続的なビジネスとして成立させることを目指しています。
生態系特定産業技術研究支援センター(BRAIN)
BRAINは、国が定めた研究戦略を、民間企業やスタートアップに委託すると共に、研究費を支援しています。
研究で得られた成果を、社会問題の解決に結びつけることを目的としています。
BRAINの事業の1つに、「ムーンショット型農林水産研究開発事業」があります。
ムーンショット型とは、価値観にとらわれず困難な課題を解決し、世界を一変させる意味を持ちます。
ムーンショット型農林水産研究開発事業(ムーンショット型プロジェクト)
本事業では、「誰も飢えさせない」ための研究開発を行っています。
コオロギの遺伝情報を解析して品種改良を行い、食料と飼料へ利用します。
高栄養価で低アレルギー、また従来より大きいコオロギを生み出し、早期の家畜化を目指しています。
一方、コオロギは食品ロスを栄養源として育つ生体機能を持つので、ムダのない循環型社会への利用も検討されています。
NPO法人昆虫食普及ネットワーク
2019年に設立された昆虫食普及ネットワークは、様々な昆虫食レシピを研究開発しています。
一般市民との距離が近く、実体験を通して昆虫食の普及に取り組んでいます。
飲食店での昆虫食の試食会や、山で採った昆虫を調理して試食するイベントを開催しています。
他団体のイベントにも参加し、昆虫食の啓発活動に努めています。
食用昆虫科学研究会
2011年に発足した食用昆虫科学研究会は、本業を別に持ったメンバーが集まり活動しているNPO法人です。
ラオスでゾウムシの養殖を指導したり、昆虫の詳しい栄養価を研究したりしています。
メディアを通した情報発信に加え、科学館や学校でイベントを開催し、実体験を通して昆虫食の正しい知識を伝えています。