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インポッシブル・フーズとは?-アメリカ発の代替肉が急拡大

インポッシブル・フーズとは、2011年にスタンフォード大学名誉教授のパトリックブラウンにより設立された植物由来の代替肉を製造するスタートアップ企業だ。

同社が製造する大豆肉は、本物の肉の食感・味を楽しめるため、ベジタリアンの多いアメリカで急速に普及している。

インポッシブル・フーズは、食業界に革命を起こしつつあるのだ。

インポッシブル・フーズとは

インポッシブル・フーズは、カルフォルニア州レッドウッドシティに本部を置く植物由来の代替肉を開発・販売する企業だ。

スタンフォード大のパトリック・ブラウン教授は、工業用畜産農業の環境への悪影響を懸念し、動物を使用しない食品を普及させるため、インポッシブル・フーズを設立した。

現在、企業価値は約8000億円とされる。

既存投資家には、米マイクロソフトの共同創業者ビル・ゲイツ氏やカタール政府ファンドなどがおり、大きく期待されている。

同業にはビヨンド・ミートがいるが、2021年10月28日時点での企業価値は7200億とされ、代替肉市場の期待感は高い。

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インポッシブル・フーズが急成長する背景

食肉文化による健康・環境への問題の大きさや動物愛護の観点からインポッシブルフーズは急激に成長している。

食肉は健康に悪い

1つ目は肉類、加工肉の摂取による死亡リスクが高くなるという問題だ。

世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)は、「赤肉、加工肉の摂取は大腸ガンのリスクをあげることが”確実”と発表しており、赤肉は週500g以内、加工肉は出来るだけ控えるようにと言われているのだ。

肉類、加工肉の過剰な摂取により、健康を脅かすことになるからだ。

畜産業の環境への影響が大きい

2つ目に畜産業の温室効果ガスの排出が問題である。

なんと畜産業の温室効果ガスの排出量は、自動車などの交通機関から排出されるより多く、

環境問題に大きな影響を与えているのだ。

公式サイトによると、インポッシブルフーズの代替肉は、家畜肉と比べて、使用する水が87%、土地が96%少なく、排出される温室効果ガスも89%少ないとのことだ。

動物愛護の観点

3つ目は動物愛護の問題だ。

私たちヒトの食料のため毎年多くの家畜たちの命を奪っている。

また飼育環境が劣悪なところもあり、多くの動物たちを苦しめている。

インポッシブル・フーズ の植物肉の作り方

インポッシブル・フーズは主に大豆を原料とし、特許技術によって大豆からヘムを抽出することができる。

このヘムが本物の肉さながらの肉汁を再現しているのだ。

インポッシブル・フーズは様々な工夫により食肉を再現している。

レグヘモグロビン中のヘムが決め手

私たちは焼かれた肉をみてなぜヨダレが垂れてしまうのだろうか?

インポッシブル・フーズは、食肉の本質は「ヘム」という物質が私たちを惹きつけていると考えた。

ヘムはレグヘモグロビンというタンパク質にくるまれて、血液や筋肉の中に存在しており、牛肉において、ヘム中の鉄が肉の赤色やうっすら感じる鉄の味をもたらしている。

焼いたときに赤色から茶色に変色するのも、このヘムのおかげだ。

インポッシブル・フーズは、大豆にもレグヘモグロビンと似た構造をもつたんぱく質にくるまれたヘムが存在することに着目し、植物からヘムを抽出することに取り組んだ。

しかし、インポッシブル・フーズによると、4000平方メートル分の大豆からとれるヘムを含むタンパク質はわずか1㎏のみである。

こうした現状からインポッシブル・フーズの創業者であるパトリック・ブラウンは、遺伝子組み換え酵母を使い、ヘムを培養する方法を考案し大量生産することが可能となった。

この方法では、温室効果ガスの排出量や水の消費を大幅に削減できるようだ。

一つ一つ物質を特定し食肉の香りを再現

インポッシブル・フーズは、牛肉だけでない豚肉や鶏肉などが焼かれた際の香りを再現している。

本物の肉には様々な物質が絡み合い、焼くとさらにこれらは変化し香りが放出される。

そのため、インポッシブル・フーズは植物肉をより本物の肉に近づけるために香りの分析にも力をいれている。

ガスクロマトグラフィー質量分析により、牛肉に含まれる香りを一つずつ分離し特定するのだ。

オレゴン州立大学のステイシー・シモニッチ教授によると、牛肉の香りに含まれる物質を正しい割合を理解することで、人工でも再現することができるという。

このような分析により、インポッシブル・フーズはより本物に近い香りをもつ植物肉を研究・開発している。

タンパク質を分析し食感を再現

インポッシブル・フーズは、食肉に含まれるたんぱく質を一つずつ分離特定し、同じ特徴をもつ植物たんぱく質を調査している。

植物たんぱく質は、苦みが強い傾向があるため、よりすっきりした味のたんぱく質を開発する必要があるようだ。

インポッシブル・フーズはこれらの分析により、年々植物たんぱく質の構成を変えて改良を重ねている。

インポッシブル・バーガーver1.0では硬さや歯ごたえを再現するため、小麦たんぱく質を用いていたが、ver2.0では、大豆たんぱく質を採用している。

この変更により、よりビーフバーガーに近い食感とタンパク質含有量を再現している。

また、小麦たんぱく質を抜いたことでグルテンフリーとなり体に優しくなっている。

大豆レグヘモグロビンの安全性は大丈夫か?

インポッシブル・フーズは2014年、米食品医薬品局(FDA)にたいして透明性を保つため通知を提出した。

インポッシブル・フーズは、レグヘモグロビンは日常的に摂取しているたんぱく質と非常に似た構造をもち、毒性もないことから安全と判断している。

しかし、FDAは「インポッシブル・フーズの主張は、大豆レグヘモグロビンを消費することの安全性を立証するものではなく、安全性の一般的な認識を提示するものでもない」と主張しており、懐疑的なようだ。

さらなる安全性の検証のため、インポッシブル・フーズは平均的なアメリカ人が消費する牛肉を代替した場合のレグヘモグロビン量を基準とし、その200倍以上のレグヘモグロビンをラットに与えるという実験を行った。

このような取り組みの結果、インポッシブル・フーズが手掛けるハンバーガーは政府当局により承認され、2021年5月にアメリカの学校給食のメニューとして採用された。

インポッシブル・フーズの代表商品

インポッシブル・フーズは今までにハンバーガーのパティやソーセージ、豚肉の代替に成功している。

インポッシブル・バーガー

2019年9月には既にインポッシブルバーガーは完成し、カルフォルニア州のスーパーで販売されている。

レストランやファーストフード店を通してのみ販売が許されていたが、米国食品医薬品局が大豆レグヘモグロビンは火を通さなくても安全だと認可したことをきっかけにスーパーでの販売を開始した。

インポッシブル・ポーク

2020年1月の全米家電IT見本市(CES)にて、インポッシブル・ポークは発表された。

インポッシブル・フーズのセレスト・ホルツによると、牛肉とは異なる、しっかりとした肉質、ジューシな風味を再現することが難しいという。

本物の豚よりおいしいという感想をもつ人も多いようだ

インポッシブル・ソーセージ

インポッシブル・バーガーに続いて販売されたのがインポッシブル・ソーセージだ。

2021年8月に小売り販売が開始され、多くのアメリカ大手スーパーで購入できるようになった。

インポッシブル・ソーセージはもちろん完全に植物由来で、コレステロールやトランス脂肪酸を含まない。

また、従来の豚の生産と比べて、水使用量79%、土地使用量41%削減できる。

温室効果ガスの排出量も大幅に削減できるようだ。

インポッシブル・フーズの未来

インポッシブル・フーズは2021年時点での時価総額は約5000億円となっており、市場からの評価は高い。

同じく植物性代替肉を製造するビヨンド・ミートは、すでに上場済みで時価総額は1兆円であり、インポッシブル・フーズの伸びしろは大きい。

今後は、先ほど紹介した商品の他にも展開していくと思われ期待が高まっている。

イインポッシブル・フーズの開発中商品

インポッシブル・フーズは食肉の代替だけでなく、牛乳やツナなどの魚の代替も目指している。

インポッシブル・ミルク

インポッシブル・フーズは食肉の他に大豆をベースとする植物性の代替ミルクを開発している。

インポッシブル・ミルクは見た目だけでなく味も本物そっくりで、混ぜたり泡立てたり、温めたりすることができる。

他社の代替ミルクは熱が加わると凝固してしまうため、ホットコーヒーに混ぜると二層に分離してしまう。

対して、インポッシブル・ミルクでは二層に分離することなくホットコーヒーに混ぜることができるため、スーパーに並ぶ日が近いと期待されている。

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